のら猫にご飯をあげてもいいの?
地域ねこの取り組み事例 レポート1

地域ねこの取り組み事例 レポート2


のら猫とご飯やりの話~駅前ののら猫事情~

のら猫には不妊去勢は不可欠です。  
きっかけは平成13年の3月初め、寒い日でした。たまたま通った道のゴミ箱の脇に、生後3ヶ月くらいの子猫が固まって4匹いました。いつもなら見過ごすのですが、雪が降り、身を隠す所もないその場所で、道行く人が投げたものを食べたりしています。それは塩辛い魚のつくだ煮のような物だったり、辛いソーセージだったり、普通だったら猫は食べないような物でした。いったん帰宅したものの、どうしても気になりフードを持って様子を見に行くと、子猫達はまだそこにいて、私が持っていった猫缶を喜んで食べました。どうしよう…。我が家はペット禁止のマンション、連れて帰れません。NDNに相談をしたところ、保健所は保護してくれないこと、犬猫を保護する施設はどこにもないことを知りました。


その日から、私のご飯やりが始まりました。最初は、ご飯を運んだり、ダンボールで猫ハウスを作っていただけでしたが、まもなく成長した子猫のうちの1匹が4匹の子猫を産みました。その頃は猫が1年間で3~4回も妊娠してどんどん増えるということを知りませんでしたので、危機感もなく、その後も何匹かのメス猫が子猫を産み、子猫たちは幸いなことにNDNに登録して全てもらわれていきました。私に馴れていた母猫のうちの1匹を、不妊手術をきっかけに、元に戻すにしのびなくチビと名付け、思い切って我が家に入れました。  

それから4年の間、いろいろな猫を見てきました。吹雪いて雪が吹き込む夜は、母猫と2匹の子猫が、廃棄物の板の上で小さくなって寒さをしのいでいました。でも傍らの子猫の1匹は死んでいるのです。そして、もう1匹もしばらくしてから姿が見えなくなりました。別の母猫が置いていった白い子猫はとても小さく用心深い子でしたが、ご飯がくるのを、いつも待っている姿がとても可愛く、いつか保護しようと思っていた矢先に、突然姿を見せなくなり、それきりです。夜、白い小さな姿がポツンと待っていたのを思い出すと、 「何でもっと早く保護してやらなかったのか」と今でも後悔で胸がいっぱいになります。  

のら猫にとっては、食事の確保も並大抵のことではありません。目が片方しかない母猫が、子猫のために鳩を狙って、雨でも風でもじっと待っているのを何度も見ました。この母猫は4度目の出産の後、何とか捕獲して不妊手術をしました。子猫を産んで3ヵ月でしたが、すでに妊娠の兆候がありました。そしてエイズキャリアと解りました。中々、捕獲できなかったのですが寝床を追われてしまい、寒さの中でこのまま死んでしまうかと思われましたが何とか奇跡的に捕獲出来ました…しかし一ヶ月後、多臓器不全で亡くなりました。一ヶ月間、美味しい猫缶を食べホッカイロを入れた毛布の上で過ごしていましたが食べなくなって2日後に病院で亡くなりました。多臓器不全でした。私はこの香多芽にのら猫の生き様を見ました。忘れられないのら猫の中の一匹です…。

陽だまりでうたた寝していたり、道端でゴロゴロしているのら猫を見ていると、ノンビリして自由でいいなぁ~と思いがちですが、実際の生活は過酷です。まず、毎日の食事があるとは限りません。あるとしても本来は猫には害になるものだったり、鼠や鳩などの小動物、時にはトカゲや蛙も食べる事があります。寒い冬にはたくさんの猫が命を落とします。彼らは一様に汚れ、蚤や蚊に刺されっぱなし、交通事故は勿論、いろいろな病気にかかり、寿命は飼い猫の3分の1の、4~5年でしかありません。…そしていつもビクビクしながら暮しています。

ある時、ご飯やりをしていたら、臭いがするとか現場が散らかるとか、守衛さんの1人に注意をされてしまいました。私も猫のことばかり考えていて甘えがあったと思います。食器は必ず回収することで何とか置かせてもらいました。朝、出勤前に寄って器を回収して、夜にまたご飯をやりにゆくという生活です。少しでも回収が遅れると、「来ないじゃないか」とか、1ヶ月でも回収し忘れると鬼の首でも取ったように文句をいってくる…。でも、猫のために絶対、止めるわけにはいきませんし、止めようとも思いませんでした。

3年目の凍るような2月のある日、何とか寒さをしのぐ為の猫ハウス(下の写真)を置かせて頂きたいと決心し、JRの総務の方に話を聞いてもらう事になりました。結果は「絶対に餌をやるな!」でした。捨てられていたこと、不妊去勢していること、保護できる子は里子に出している事など話しましたが、心情はわかるが許可は出来ないとの事です。私は、世話をしなくてはならない子がいる限り、ご飯をやることを止めるわけにはいかない事、これからはご迷惑を掛けないように見えない所で活動しますと伝え、関わってきた猫のことや住所、氏名、電話番号を明記した書類を渡してその場を去りました。  

今年になってチョビというオス猫を保護しました。この子は馴れて頭を撫でさせてくれるようになっていましたが、中には意地悪な人がいるようで、雪を投げつけたり、棒を猫ハウスに入れたりされ、怖がって10日ほど姿を見せませんでした。心配していた矢先の大雪の日、久しぶりに姿を見せたのですが、いつもはしないのに、しきりに私の後を追ってきました。このまま置いていくと2度と会えなくなるような気がして、思い切って保護しました。健康診断の結果、この子もエイズとわかり、他の猫と一緒にはできずケージ暮らしになりました。現在、チョビは3段のケージの中で静かに安全に暮しています。出来れば里親さんを探してやりたいと思っています。5月に入り、子猫の為に鳩を狙っていた片目の母猫が、エイズが発症しているのではと思う姿で現れました。厳しい冬を越えて安心していた矢先でした。片方しかない目は涙でグチャグチャ、口の周りは黒くなりよだれを垂らし、毛もいつもなら綺麗に舐めているのに、全体に艶も無く汚れ放題…。そして、ご飯にも少し口を付けただけで食べようともしません。捕まえようにも捕獲箱には絶対に近寄らないし、マタタビやチキンのから揚げを入れても入りません。仕方なくスープ状のフードや猫ミルクをと思い、差し出すとやっと少し食べてくれました。何とか保護して温かい毛布の上に寝かせてあげたいと願うのですが。本当にのら猫の現実は酷いです、そして辛いことが多いです。

4年の間に駅前から合計7匹の成猫を我が家の子として迎え入れました。親類から預かった子を入れて8匹の大家族です。皆、事情のある子です。3LDKのペット禁止のマンションには多すぎる子供達です。決して仲が良いわけではありません。外に出してもらえる訳でもありません。でも皆、お互いに認め合って、それぞれがお気に入りの場所で昼寝をしたり自己主張したり、本当に可愛いです。この子達からは沢山の事を学びました。のら猫といえども、本来は人と暮して初めて幸せになるということ、決して野性ではなく人の庇護があって安心して暮らすということ、その証拠に猫達は必ず人がいる場所で暮しています。大人の猫でも本来は寂しがりやで、甘えん坊の子猫だということも解りました。ですから、完全室内飼いでも何ら差し障りはありません。

こうして、のら猫たちの暮らしを見てきましたが、今は子猫の姿も殆どなくなりました。まれに新顔が現れる事がありますが、定期的に姿を現す子は、現在は8匹位です。これからも1匹でも救えるように、出来る限り続け、頑張りたいと思っています。

平成17年5月29日 駅前猫のデータ(平成13年3月~平成17年5月)

<今まで保護した数> 合計 33匹
●子猫…5匹(全て里親決定)  
●成猫…18匹(1匹は妊娠中で子猫を3匹出産)

<現在、ご飯をやっている数> 合計 8匹(確認している数)
●オス…5匹  
●メス…3匹(全て不妊手術済み、または手術予定あり)

<その他> 合計 7匹
●行方不明…4匹  
●死亡…3匹(成猫2匹 子猫1匹)

<病気について> 
上記の猫たちの病気や怪我の状況(重複あり)
●白血病 1匹(メス)
●エイズ 6匹(メス1匹 オス5匹)
●怪我、骨折で足が変形 2匹(メス)
●喘息、慢性鼻炎 3匹(メス1匹 オス2匹)

飼い主のいない猫のお世話をする人へ ―餌やりさんの心得―

猫の世話ができないなら、最初から餌を与えたり、かまったりするべきではありません。
一度でもそうされた猫は、ずっとあなたを頼ってくるからです。
最初に猫を捨てる飼い主が一番悪いのは、誰でも知っていることです。
捨てられ飢えた猫をかわいそうに思う優しい気持ちの餌やり。
猫を助けている、良いことをしているのに、苦情を言われ嫌な思いをしている人もいるでしょう。

でも、捨て逃げできる飼い主と違い、毎日餌をやる餌やりさんは、逃げも隠れもできません。
餌をやる猫はあなたの飼い猫ではないかもしれませんが、その行為に責任ができてしまうのです。

のら猫の餌やりルール

【避妊・去勢手術をする】
猫を増やさないのは餌やりの鉄則です。
※餌をあげるから増えるのではありません。手術をしないから増えるのです!
※のら猫が馴れていなくて捕獲できない場合は、NDNに御相談下さい。

【餌場まわりをきれいにする】
自宅の敷地以外の所では、餌やりの痕跡は残さないようにしましょう。
食べ残しや近辺の糞尿処理は餌場を衛生的に保つためにもきれいに後始末をしましょう。
餌をやっている事がわかると、そこに猫を捨てにくる無責任な飼い主もいます。

【餌やり時間を決める】
餌の時間になると猫が集まってくるように時間を決めましょう。
たくさんの猫がいつも一定の場所にいるのは、知らない人にとっては不安になるものです。

【増えないことを知らせる】
関係するご近所に、不妊手術が済みこれ以上猫の数が増えないことを
アピールして猫がそこで暮らしていくことを認めてもらいましょう。
(これは可能ならば実行してください。黙認してもらえればそれにこしたことはありません)


【香多芽ちゃん】
エイズが発症して酷い様子でしたが何とか保護しました。
でもその一ヵ月後に多臓器不全で亡くなりました。

 

 


【茶トラの茶々】
【茶々と兄弟のキジシロのポポ】
現在、我が家の一員です。

 

 

【三毛の奈々ちゃん】
片足が不自由な子でしたが里親さんに貰われました。今は本当に幸せです。

 

 

【スナ】
ずっとご飯を食べに来ていましたが一年前からパッタリ来なくなりました。

 

 

寒さをしのぐ為の猫ハウス

 

 

【クロ兄弟】
優しい里親さんに2匹一緒に引き取られました…本当に幸せです。

 

 


【行方不明のキジトラの女の子】
とても慣れていましたが、ある日、パッタリ来なくなりました。保護しようかと迷っていた矢先でした。残念です。

 

 


【キジトラのコロタン】
仔猫の時から餌をやっていましたが何とか保護…家の子です。

 

 


【キジトラのキジパパと白サバのサブ】
2匹ともエイズキャリアです…サブは我が家の一員になり、キジパパも最近、保護しました。

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