【野鳥のヒナ】

平成 19年 7月 12日 掲載

この時期は野鳥が子育てをする微笑(ほほえ)ましい光景をあちこちで目にします。

ツバメのような渡り鳥だけでなく、いつもは憎まれ役のカラスですら、その一生懸命な子育てぶりには感心させられます。実家の裏手の公園にある大きなケヤキの木の上に、洋服のハンガーや小枝を利用した立派な巣があって、ハトほどの大きさもない子カラスがちょこんと座って餌を待っています。

お父さんカラスが少し遠くから心配そうに見守っているので、見ているこちらも心配してしまいます。毎年、この木に巣作りするカラスのヒナが最後まで育つことはほとんどありませんが、今年はどうでしょうか。

私が野鳥に関心を持つようになったのは、ピッピとの出合いからです。交通量の多い国道の交差点にうずくまり動けないでいた小鳥のヒナを保護しました。近所の小鳥屋さんに相談したら、ヒヨドリのヒナで巣立ちの練習に失敗したのだろうとのこと。ヒヨドリの名前を聞いたのはこの時が初めてでした。

野鳥を含めた野生動物は、基本的には個人が飼うことはできません。傷ついた野生鳥獣は紫雲寺(新発田市)にある「新潟県愛鳥センター」に収容して治療にあたります。残念ながら、農作物に害を与えて駆除される有害鳥獣の類(たぐい)や、クマやサルなどは保護の対象にはなりません。

鳥のヒナが道端にいても巣立ちの練習をしていることが多いので、できるだけそうっとしておくのが良いそうです。この時もセンターに連絡して、巣立ちまでの間だけわが家でヒナを育てることになりました。餌は“すり餌”といって粉末の餌を水で練ったものを与えます。ブドウなどの果物も大好物で、鳴いて甘える姿も、熱心に毛繕いする姿も、すべてがかわいらしくて、すっかりとりこになりました。

順調に巣立ちの練習も進み、高い木に飛ぶこともできるようになった矢先に、近所の猫に襲われて、はかなくも短い一生を終えました。その後も別の野鳥を保護する機会がありましたが、やはり途中で死んでしまいました。自然の中で暮らす動物たちは偉大です。犬や猫とは違った独特の魅力がある一方で、命のはかなさも実感します。身近にいるたくさんの野生動物たちの存在と、彼らが生き抜いている環境のことを私に考えるきっかけを与えてくれたピッピに感謝しています。

 

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