【沖縄でペット野生化】

平成 19年 8月 9日 掲載

ライセンスを取って以来、スキューバダイビングが趣味になり、沖縄や慶良間諸島などの南の島に行くのが楽しみの一つになりました。泡盛に島唄、オープンで温かい人柄にすっかり魅了された私ですが、そんな大好きな沖縄で一つだけ、行くたびに気持ちが滅入ることがあります。

那覇の「国際通り」というメインストリートは多くの人でにぎわっている沖縄のシンボル的存在ですが、そこを歩くと、決まって野良犬を見かけるのです。新潟市でいうところの古町や万代シテイに、当たり前のように餌を乞(こ)う犬がいるといえば、その異常さに想像がつくと思います。

雑踏の中にぽつんと犬が立っています。食べ物をもらえそうな人を見つけては人懐こそうに尻尾(しっぽ)を振り、じーっと目で訴えます。初めて見かけた犬はテリア系の小型の雑種で六kgほどもあったでしょうか。ぼろぼろの毛とガリガリに痩(や)せた姿で、道行く人に一生懸命食べ物を求めていました。私はどうして良いかもわからずパンを買いに走り、戻ってきたらその犬はいなくなっていました。あの犬はどうなったのだろうと今も思い出されます。

観光で有名な沖縄も、動物愛護の側面からは全国的に遅れた県の一つです。地球生物会議(ALIVE)によると、平成十七年度、人口一万人当たりの犬猫の処分数は沖縄が全国で四番目に多く、特に犬に関しては年間の処分数が新潟県では三百九十九匹だったのに対して、沖縄では六千三百三十三匹でした。犬の捕獲数も新潟の五倍以上もあるので、適正飼育の意識がまだまだ低いことが想像できます。

今月の三日に環境省は絶滅の恐れのある野生動物の「レッドデータブック」にジュゴンを追加しました。私たち人間の経済活動などが原因で多くの野生動物たちが存在の危機にありますが、ペットに関しても深刻な問題が起きています。捨てられた猫が野生化してヤンバルクイナを脅かしたり、推定百匹しかいないイリオモテヤマネコには、のら猫を原因とするウイルス感染の問題が発生しています。

ペットとして飼われたアライグマが野生化したり、ブラックバスの違法放流など、挙げればきりがありません。私たち人間の安易な気持ちが、多くの取り返しのつかない事態を引き起こしている現実に、もうそろそろ気付く時期にきているのではないでしょうか。

 


沖縄ではあちこちで猫を見かける。一見ほのぼのとした風景だが、
野良猫が野生動物を脅かすことも・・

次のエッセイへ>>>

このページのトップへ