【ペット産業】

平成 20年 2月 28日 掲載

廃業したブリーダーから三十五匹もの犬が持ち込まれ、新潟市保健所が異例の譲渡会を行ってからちょうど一年がたちました。持ち込まれた犬たちは販売用の子犬ではなく、高齢で身体に問題のある「親犬」でした。凍えるくらいの寒い日でしたが、四百名近くが長い列を作り、すべてに新しい飼い主が見つかりました。

目が見えない犬やヘルニアで歩けなくなった犬、感情表現のできない犬を抱きしめて涙ながらに受け入れる家族の姿もあり、多くの人の善意に心が温まる一日となりました。

親犬の存在が人の目に触れることはあまりありません。昨年の六月に動物取扱業者が登録制になり、誰でも名簿が閲覧できるようになりましたが、新潟市だけで百件を超える動物販売業者が登録しているのには驚きました。ほんの数匹のいわゆる個人ブリーダーから、中には数百もの数を抱える業者もおり、「生産」される子犬の多さと、彼らを産む「親犬」の存在をあらためて考えさせられました。

今は欲しいものがすぐに手に入る時代ですが、命ある存在であるペットはもっと厳しく考える必要があるでしょう。言い換えれば、誰でも、何でも、簡単に、手に入るようなシステムはペット産業では必要ないということです。

トラブルが多数発生していることもあり、ペットの移動販売、ネット販売を見直すキャンペーンが昨年の十一月から業界をあげて始まりました。販売する側の意識の向上と、購入する側の自覚によって、良い方向に向かうことを期待しています。

ところで一年前の譲渡会で新しい飼い主の元にいったシーズーの愛ちゃんは、半年ぐらいたってからようやくワンワンと鳴くようになりました。飼い主さんによると、初めて見た時はペタンとうつぶせたまま顔も見えない状態で、一番心が痛んで飼うことを決めたそうです。今ではどこに行くにも一緒で、多くの人からかわいがられています。

今月に入って、また新たに繁殖犬と思われる犬が保護されました。栄養不足から毛が抜け落ちていますが、保護者の元でゆっくりと心と身体のリハビリをしています。

 


今月保護されたダックスフント。

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