【権利放棄】

平成 19年 3月 22日 掲載

犬の名前と言えば「ポチ」というイメージがありますが、メーカーが調べたペットの名前ランキングを見ると十位にも入っていません。明治後期に流行(はや)った名前で、ペットの名前も時代によって違うようです。

ところで、わが家には私が幼い頃にポチという名前の犬がいました。子犬の時に道端に捨てられて近所の人が飼ったものの、遠吠(ぼ)えをするという理由でまた捨てられました。幼かった私と妹は、自分たちが世話をするからと母に頼み込み、ポチは晴れてわが家の一員になりました。

子どもの言葉など当てにならず、結局世話をしたのは母ですが、ポチの遠吠えは確かに立派なものでした。毎日、夕方になると空に向かって高らかに遠吠えをします。
「今の時代、こんなにきちんと遠吠えができる犬はめったにいない、
ポチはオオカミの血がとても濃い、すごい犬なんだよ」
と父と母は聞かせてくれました。真相は定かではありませんが、ポチの身体に流れるオオカミの血をイメージして私はわくわくしたものです。

保健所や動物保護管理センターに収容される犬・猫のうち、四割近くは飼い主の持ち込みです。猫の場合、圧倒的に多いのが「望まれずに生まれてしまった」という理由です。犬の場合、一番多いのが「犬が病気や高齢になったから」で、次が「世話をする家族が病気や高齢になったから」です。

以下「咬(か)むなどの問題行動」や「引っ越しで飼えなくなったから」という理由が続きます。動物愛護法によると、飼い主にはペットを終生飼養する義務がありますが、その一方で、やむを得ない理由での権利放棄も認めています。

動物達にとって命を失うようなやむを得ない理由とは何でしょうか。
そして、それは誰が決める事ができるのでしょうか。

命あるものは必ず年をとりますし、病気にもなるでしょう。飼い主が正しいしつけ方を学び、マナーを守る一方で、一匹一匹の個性を受け止める事も大切なのだと思います。

ポチのことを「うるさい犬」ではなく「ヒーロー」に変えてくれた父と母の言葉は、今も私の胸に刻み込まれています。

 

次のエッセイへ>>>

このページのトップへ