【猫算】

平成 19年 4月 12日 掲載

春になると何となく気もそぞろになりますが、猫の「本能」は、私たち人間が思っている以上に彼らの行動を支配しているようで、不妊・去勢手術をしていない猫にとって、春は恐怖の季節でもあります。

本能に従うままに繁殖行動が起きてしまう結果、望まれないたくさんの命が誕生し、そして不幸な形で消えていくのです。

みなさんは「猫算」という言葉をご存じでしょうか。猫は生後半年ほどで繁殖が可能になり、一回に五、六匹の子猫を産みます。一年に二、三回は出産が可能なので、理論上は一組の猫のカップルが、一年後には七十九匹に増えてしまう計算になります。

ここまで極端でなくても、繁殖シーズンになると同じような相談が連日のように舞い込みます。ある日、一匹の猫が迷いこんできて、かわいそうに思って餌やりをしていたら半年後に子猫が四匹生まれ、「これ以上増えたら困るな」と思いつつも餌やりを続けていたら、今度は母猫と子猫の一匹がそれぞれ子猫を産み、どうしたらよいか、と相談を受けたことがありました。

相談者さんの自宅に行ってみたら、車庫には合計十二匹の人慣れしていない猫がいました。子猫を保護して新しい飼い主を探し、残った猫は不妊・去勢手術をすることで解決できましたが、何とも恐ろしい話です。

餌やりしていたら子猫が生まれたという理由で保健所に親子ともども持ち込まれるケースも珍しくありません。小さなケージの中で子猫を守りながら、処分されるその日までおっぱいを与えている母猫の姿を見ると、人間がやっていることの矛盾を実感します。

繁殖制限手術はたくさんのメリットがあります。生殖器系の病気になりにくくなりますし、精神的に落ち着き、安定した生活を送ることができるようになります。

オス猫は手術しなくてよいとか、発情期にはうるさいから外に出す、という飼い主さんの話も聞きますが外の世界で手術する機会がなく生活しているたくさんの猫の存在に目を向けて欲しいと思います。

自然の摂理に反するという方は、何が自然の摂理にかなっているのか考えてほしいと思います。

私も目下、二匹の野良ちゃんの手術を計画中。早く捕まえたいと願いつつも、当の猫たちはこちらの気持ちはどこ吹く風で悪戦苦闘の毎日です。

 


餌やりをしながら手術にトライしている猫たち。母子計5匹おり、3匹は手術済み

次のエッセイへ>>>

このページのトップへ