【繁殖動物】
平成 19年 3月 8日 掲載
親がいて子がいるのは動物の世界も同じですが、ペットの場合は親を「繁殖動物」と呼ぶ事から現実が推測されます。
かわいらしい子犬や子猫が店頭に並ぶ一方で、こんなに幼いうちから親と引き離されて大丈夫なのかな、彼らの親はどうしているのかな、と思う事があります。また、保健所に足を運んでいると、不思議な事がわかります。
迷子で収容されたり、飼い主が権利放棄して持ち込む他に、ぼろぼろの姿だったり、ガリガリにやせたりした純血種の犬が時々入る事があります。中には、散歩をした事もなく足の肉球がふわふわだったり、おっぱいが垂れ下がっていたりする犬もいます。
同じ地域でくり返し同じ種類の犬が保護される事もあります。海岸線ではレトリバー、山の中では秋田犬、公園では小型純血犬、書類上は単なる迷子として処理されて消えてゆく命を見るたびに、彼らに言葉を話す事ができれば、と思います。
繁殖動物は五、六歳でほぼ役割を終えますが、産める間は休む間もなく使われて、産めなくなったら用済みで暗い闇へと葬りさられる事もあるのでしょう。そんな中から救い出されたのがメグでした。長い毛にもじゃもじゃに覆われて、最初は犬種がわかりませんでしたが、トリミングをしたらアメリカン・コッカーでした。
外の世界を全く知らず、散歩ができるようになるまでにずいぶんかかりました。飼い主さんの愛情を受けて人間との信頼関係が築かれた後は、子供たちに命の大切さを伝えるための学校訪問活動に参加するようになりました。今ではすっかりおばあちゃん犬ですが、幸せで穏やかな毎日を送っています。
二〇〇三年の環境省の調査によると、日本国内で年間十五万匹の犬猫が「生産」されたそうです。その一方で、年間四十万匹もの犬猫が処分されています。生産と消費の悪循環をどうしたら止めることができるのでしょうか。
衝動的に買わない事、流行に振り回されない事、人間の欲望のままに「商品」を手に入れるのではなく、親からの愛情を一杯に受けた大切な幼い命を譲り受ける気持ちを持つ事が最初の一歩なのだと思います。